2018年春、ものづくりのヒントを求めて、刃物づくりの聖地・大阪府堺市を訪ねてきました。
包丁づくりを見せてもらったのは、八内刃物製作所の2代目・八内靖夫さん。
50年以上包丁づくり一筋で続けてきたベテラン職人である八内さんの技を見せていただきました。
堺刃物の生産地、堺は戦国時代から安土桃山時代にかけ、
貿易港として自治都市として繁栄しました。
天文12年(1543年)ポルトガル人によって鉄砲・たばこが伝来し、
天正年間(1573年〜)にたばこの葉を刻む「たばこ包丁」が、
堺で製造されるようになりました。
この堺のたばこ包丁は、輸入品のたばこ包丁より優れていたため、
後に江戸幕府が「堺極(さかいきわめ)」という極印を入れ全国に販売を始め、その切れ味の名声が広く知れ渡るようになりました。
堺刃物の製造は「鍛冶」「刃付け」「柄付け」と分担されています。
それぞれの職人が高度な技術を用いて1本の包丁を造る伝統は現在も引継がれています。
堺刃物は日本全国で約90%の料理人が使用している包丁と言われていますが、それは600年前から受け継がれてきた堺刃物の技巧に対する料理人の信頼の証しなのです。引用: 八内刃物製作所
もくじ
堺で包丁を作り続けて50年以上、手掛けるアイテムは100種類を超える
包丁職人・八内さんのキャリアは50年以上。
問屋さんの注文に合わせてさまざまな種類の包丁を作ります。
三徳包丁、出刃包丁、鮪包丁、寿司包丁、菜切包丁…
「こっちにあるんは大阪で使ううなぎ包丁やな。」
小さな工房の中で本当に多種多様な包丁が作られていました。
堺の刃物づくりは、鍛冶と刃付けが分業で作られています。
刃付けの職人である八内氏の作る包丁はなんと100種類以上!
鍛冶屋から生地を仕入れ、すべて手作業で仕上げていきます。
堺の職人の腕は今や世界でも認められ、最近では海外での注文が殺到してるということでした。
「鍛冶屋が手打ちで鍛えた生地は厚みも大きさも揃わへんから機械化は難しい。
おんなじモノを作るんやったら機械で出来るけど、種類もようさんあるから手作業が生き残るんやろな」
そう話す八内さん。
この辺は僕たちのハサミづくりにも共通する話で、お互いに共感できました。
同じ刃物職人として気になるのは道具の話
さて、キャリアは遠く及びませんが、僕も美容師シザーを作っている刃物屋のひとり。
砥石一つとってもハサミづくりとはちょっとずつ違うので、ついついそういった道具も気になります。
例えば、八内さんが使っていた大きな砥石。
粗さはどれくらいか?面直しをどうするのか?等…
それから、包丁研ぎについてもプロの考えを教えてもらい、勉強になりました。
「生涯現役」の職人魂に感銘を受けました!
今回お会いしたのは2代目・八内靖夫氏でしたが、息子さんも4年ほど前から戻ってきて、現在は隣の工房で独立されているそうです。
「私もゆっくりしたいんやけど、まだまだ仕事入ってくるんで頑張らなあかんね」
そう笑う八内さんの言葉に、生涯現役の職人気質を感じました。
写真:八内刃物製作所 2代目・八内靖夫さんと。
※2018年4月20日に執筆した記事を再編集し公開しました。