前回の記事で作務衣のシルクスクリーン加工を紹介しました。
2017年11月には、この作務衣を持って代表・菊井健一と工場長・辻内の2名がアメリカに出ました。
今回は
日本のハサミ職人、海を渡る!【序】
ということで、当時のアメリカ出張の目的と準備のようすを紹介します。
もくじ
ニッポンの技と心を伝えに行きます!
ハサミの販売や研ぎに携わる人たちが集まるコンベンションで、セミナー講師を務めるのが今回の目的のひとつです。
世界でも「日本のハサミは最高峰!」と認められています。
今回はひょんなきっかけで、我々キクイのハサミに込められた技と心をプレゼンする機会をいただきました。
これはキクイシザースだけでなく日本のものづくりをPRするチャンス!
どうせ行くなら最高の技術と職人の思いを伝えたい!
という事で、代表である僕がスライドを使ってスピーチを、ベテラン職人である工場長が簡単な実演をしようという事になりました。
なりました、が…
もちろん僕も工場長も英語はほとんど話せないし、職人にプレゼンテーションなんて、果たして務まるのか…?
さらに準備を始めてみると、海外で技術を伝えるという事には言葉以前の壁がある事に気付きました。
1.職人の勘を言語化する難しさ
まずスピーチでは、僕たちのハサミや研ぎの要点を整理しよう、という方針で進めました。
が、共通の単語がないので、ウラオシやウラスキ、触点など用語の解説から始めないといけません・・・。
用語の意味を説明した上で、例えばじゃあどういうウラスキがいいのか、という話をするのですが、これがとても難しい!
そもそも、ハサミづくりは職人の勘で覚えていることが多い世界です。
この感覚や勘を言葉で(しかも英語で!)どう言い表そうか…
最終的には深いところまで切り込んだ資料が出来たと思いますが、果たして英語でうまく通じるのか…??
いくつものことばの壁を超えることに非常に苦労しました。
2.全てが揃わない環境
一方で工場長が中心で魅せる実演では、工場の設備を再現するわけにはいかない、という難しさがあります。
日本から持っていけるものも限られる状況の中で、何を伝えるべきか。
一番大切な事を伝えるために持っていくべきものは何か…?
吟味し尽くした結果、持っていくのはハンマーと角砥石くらいで、あとは向こうで調達する事にしました。
美容師さんがハサミとクシさえあれば世界中どこでも仕事が出来るように、我々もハンマーと砥石があれば何とでもなります!
アウトプットすることで見つめ直す
いろいろと準備から難しい点も多く、実際にセミナー会場でもたくさんの苦労をしましたが・・・
こうやって、自分の仕事をアウトプットするというのは見つめ直すのには絶好の機会となりました。
特に英語となると必然的に簡単なボキャブラリーしか使えないので、いい意味でかえって単純化できたんじゃないかと思っています。
職人には普段こういう機会はまずないので、素晴らしい経験になりました。
そして、この経験を通じて、カット講習される美容師さんのすごさを実感しました。
まさに自分の技術のアウトプットですから、改めて本当に尊敬しました。
コンベンションに参加しようと思った理由とは?
僕たち自身、現段階で海外ビジネスはまだ初歩の段階で、2016年には中小機構という国の機関のプログラムを活用して、初めて市場調査にも行ってきました。
このとき、アメリカを見てきて感じたのは、ハサミを売るよりもまず先に、道具を大切にするという「心」を伝えなければいけない、という事。
その為にも、ハサミの売り手に僕たち日本人の技と心を理解してもらう必要がある、と感じました。
そんな思いを抱いていたなか、「コンベンションでスピーチをしてほしい」という話をいただき、引き受けることにしました。
次の記事では実際のコンベンションの様子もお伝えしていますが、アメリカの方たちと切磋琢磨でき、有意義な意見交換の場になりました!
※2017年11月10日に執筆した記事を加筆・修正して転載しました。