キクイシザースは和歌山でプロの美容師・理容師向けの業務用ハサミ(シザー)を作る工房です。
ホームページでもオーダーメイドについて紹介していますが、これまでさまざまなオーダーメイド依頼に応えてきました。
キクイシザースには日本だけでなく海外から「こんなハサミをつくってほしい」といった依頼も少なくありません。
私たちのような小さな工房にも海外からの問合せが絶えないのは、日本のシザー技術は世界でも最高峰と認められている、という事の証ですが…
海外とのやり取りは、言葉の壁だけでなく、気軽に行き来が出来ない、すぐに実物を見てもらえない、といった難しさがあります。
それでも、地方の小さなシザー工房である僕たちが、ハードルを越えて海外の要望に応えることが出来る理由は、
日ごろから美容師さんからの要望に細かく応える、小さな工房ならではの接客スタイルにあります。
この記事では、私たちが応えてきた数々のオーダーメイドのなかから、アメリカの美容師の依頼をご紹介します。
小さな美容師シザー工房に海外から届いた依頼に対して、どのように進めたのか?
エピソードを紹介するなかで、キクイシザースのオーダーメイドの取組や、オーダーメイドを依頼するときのポイントをお伝えできると思います。
ご紹介するのは海外の事例ですが、
「プロの道具にふさわしい、ひとりひとりにあったハサミを作る」
その基本は、国内でも海外でもいっしょです。
シザーのオーダーメイドを検討している理容師・美容師の方にも当てはまる内容なので、参考に読んでいただきたいと思います。
もくじ
美容師シザーのオーダーメイドのメリットと
失敗しないための注意点
まず前提として、オーダーメイドのメリットと注意点について話をさせてください。
使う人の手の大きさ、シザーの使い方、求める切れ味やサイズ感は人それぞれ。
だからこそ、オーダーメイドには次のようなメリットがあります。
- カット技法に最適な使いやすいかたちを追求できる
- 鋼材やバランスなど、こだわりを叶えることが出来る
- 世界に1丁しかないオリジナルシザーとして、愛着を持って使うことが出来る
とはいえ、既製ではない分、あれもこれもと要望が膨らむと価格が高くなってしまったり、かえってバランスが崩れて使いにくいシザーになってしまいます。
また、例えば私たちキクイシザースに「ネジにデコレーションのついたシザー」を求められても応じられないように、各メーカーごとに特色があるので、得意な加工とそうでない加工があります。
だからキクイシザースでは、コストのかかるオーダーメイドを無理におすすめする前に、既製品の定番モデルに出来るだけ近いかたちで希望に添うものの提案をしています。
共感や信用のできないメーカーにわざわざオーダーメイドを託す人はいないと思うのですが、メーカーの作るシザーの特徴とユーザーの理想とするシザーのカタチがかけ離れすぎていると、お互いに納得のできる結果になるのは難しいものです。
だからこそ、既製品シザーを購入するとき以上に、メーカーとユーザーの信頼関係が大切だと思っています。
以上の考え方からキクイシザースでは、作り手である私たちの出来ることを押し付けるのではなく、使い手の本当に必要とするシザーのイメージをいっしょに考え、カタチにするという事を心がけています。
使い手である美容師さん目線でヒアリングをしていると、難しいカスタマイズでコストを掛けなくても、実は定番商品を少しアレンジする程度の、ちょっとしたカスタムでご要望を叶えられる、といったケースがほとんどです。
では実際に、どのような依頼に対してどういうシザーを作ったのか?
ここからは、実際にアメリカの美容師さんのケースでオーダーメイド完成までの流れを紹介したいと思います。
事例:アメリカの美容師さんのオーダーメイドシザーづくり
現地でお会いした事のあるアメリカの美容師さんから以下のような問合せをいただいたのがきっかけで、オーダーメイドシザーを作らせていただく事になりました。
- 今使っているシザーのサイズ感は気に入っているが少し重く感じている。
- ロングシザーだけど、メンズの刈上というよりも刃先で細かい仕事をするのがメインの使い方。
- コーティングや装飾が出来るならやってほしい。
そこで、いま使っているシザーの写真をいただき、寸法を測ってもらい、実際のサイズ感のイメージを膨らませてもらいました。
キクイで作っているシザーの仕様も写真で送りながら要望を整理していくと、「本当に必要なカスタマイズはどの部分か」といった優先順位が分かってきます。
最終的に、
- 使っている同じサイズ感で先は細く、出来るだけ薄めに仕上げる。
- 操作性とグリップ力の兼ね合いを考えてハンドルをカスタマイズ。
- 使いやすさを優先して、余計な装飾は除く
といったシザーを提案しました。
とくに装飾については「道具」にこだわる私たちは得意としていないことを前提に、コストとデメリット(そして私たちの出来ることと出来ないこと)を説明しました。
最終的にはお客さんにも「キクイシザースらしさを大事にした、シンプルで使いやすいモノを作ってほしい」と納得いただけました。
オーダーメイド美容師シザーの完成まで
チャットを駆使してイメージ共有
リアルに見てもらう事の出来ない海外からのオーダー。
だからこそ、サイズ感や加工内容など、途中段階でチャットで写真とビデオを送りながらイメージの共有に努めました。
アメリカと日本で時差があっても、チャットであればスムーズにコンタクトが取れます。
ちなみにキクイシザースでは、以下の点で日本の美容師さんとのやりとりもLINEを使うことが増えてきました。
・テキストだけでなく写真や動画も手軽に送ることが出来る。
・美容師さんの時間が空いたタイミングで確認してもらえる。
・既読が分かるので、読んでいただいた事の確認や連絡フォローがしやすい。
普段からLINEで問合せにお応えしているので、アメリカとのやりとりでも大きく変わることなく連絡ができました。
(いつもと違うのは英語を使わなくてはいけない!という点くらいです)
そして、最初の注文から2か月かけて最終的にこんな1丁が出来上がりました。
1年以上前に仕上げさせてもらったシザーですが無事よろこんでいただき、いまではすっかりメインシザーとして愛用いただいています。
シザーのオーダーメイド、お気軽にお問合せください!
キクイシザースは地方でものづくりをしている職人集団の小さな会社。
なぜ、そんな僕たちが海外のオーダーメイドにも取り組むことが出来るのか?
その理由は、全国の美容師さんとリモートで接客してきたことが、国内・海外を問わないオーダーメイド対応に繋がっています。
紹介した事例は海外なのでやりとりが非常に難しい面もあったのですが、国内ではもっとスムーズに、LINEアプリを使って、シザーのちょっとした相談にも対応しています。
また、オーダーメイドで実際に作ったシザーの紹介記事も増やしていく予定です。
ぜひ、ブログで紹介する実例もご参考に、「こんなシザーを作ってほしい!」というご要望があればラインの友だち登録から気軽にお問合せください。